第五章 👏出稽古👏


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俺は真姫乃(まきの)優矢(ゆうや)
友達はラクロス部にしかいない

それも障害(かわむら)と崇伸(たかのぶ)だけだ
友達は多ければ多いほどいいってやつもいるが、それは間違っている
友達ってのは、絶対的信頼を置ける障害で固めていくべきだ
数より質の方が大切なんだ
偏差値87の俺がいうんだから間違いない

紅葉のほとんどがアスファルトを覆い始め、午後5時に空は真っ暗になる

年も明けこの時期になると部活の出稽古を決めることになった

俺達三人組は東京の某一部リーグの大学に行かせてもらえることになった
正直わくわくした
俺は天才ラクロッサー真姫乃として3部リーグのエースアタッカーで恐れられていたし自信もあった

集合は7時

鳩が鳴いている

「集合ーー!」
今までに聞いたことのない声だった

空気は一瞬にして凍りつき、覇王色の覇気を放つ、主将の鈴木さんだ
すぐに核兵器なことは嫌でもわかった

アップが終わり練習が始まった

もう主将は、戦車と化した
俺は熊と素手で闘って勝ったことはあるが、熊なんてもんじゃなかった

ミサイルだ

ボールが地面に落ちていればどの位置からでも3秒で瞬間移動して、
周りのプレイヤーは生き絶える

俺は1on1をかけた

勝負は一瞬だった


かけた瞬間ボールは主将のクロスに収まりクリアを開始している
ヘルメットが割れており、俺の下半身は地面に埋まっていた

天才ラクロッサー真姫乃が全く通用しなかった

プッシュを受けた

受けたことのない衝撃波だ

東日本大震災なんてほんのレクリエーションに過ぎねーじゃねーーーか

俺のフィジカルではその衝撃に耐えられず、7メートルは飛んだ

ボールはサイドラインを割った

俺はこのとき、レベルが違いすぎて嫌でも俺達はザコだと痛感することになった

障害を負った俺は、
障害と崇伸と戦場を後にした

俺達はけつの中の蛙だったんだ
俺達は本当にただの障害だったんだ

俺は今まで走のスピード、フィジカル、フットワーク、腕力で高校まで負けたことなんてなかった

体力テストも全て満点のA
しかしそんなものはMr鈴木さんに通用しなかった

努力をしてもとても追い付けるような次元ではなかった
これに関しては才能なんだ

俺は今まで偏差値60くらいの弱いやつをなぶり殺してオナニーしていたのにすぎなかったんだ、ストイックさが全然足りなかったんだ

帰りの水戸駅行きの常磐線で、障害と崇伸は出稽古が終わったことに満足している様子だった

確かに戦争から無事生きて帰ってこれたことは喜ぶべきだけど、学ぶべきことがたくさんありすぎて、俺はその夜考え込みちん毛を何本も抜き始めた

ちん毛は部位によって抜けやすさが違うことを知った

「あんな怪物がいるってことは、他の分野でも俺以上のやつなんてごろごろしてるに違いない」

嫌でもそれに気づかされた

俺は今までの弱い自分を捨てるべく、その夜、腕立てを3万回、腹筋を6万回、ランニングを30キロ、総合職の過去問を30年分静かに解き直した。


俺は変わる

変わらなくちゃならないんだ